2021年5月20日に「Snapchat」を提供するSnap社が開催するPARTNER SUMMITの中で、次世代ARグラス「Spectacles」の新作が発表されました。
GoogleやApple、FacebookもARグラスの開発をしていますが、まだ製品の詳細は明らかにしていません。ビッグテック企業に先駆けてSnap社が発表した「Spectacles」について調べてみました。
次世代Spectaclesの概要
1世代前のモデルSpectacles 3(販売中)は、カメラによる撮影はできましたがレンズにARを投影する機能はありませんでした。ある意味オシャレなデザインではあったのですが、レンズの両サイドにはカメラが丸見えで、日常的にサングラスのようにして着けるには目立つ印象でした。
1世代前のSpectacles 3
今回、発表された4世代目となる新型Spectaclesでは、レンズにARを投影できる初めてのモデルです。直線的なデザインに変更され、色もブラック一色にして多少シックなイメージになっています。
顔に装着したときのサイズ感はやや大き目で、フレームもかなり厚みがあるように見えます。重さに関しては134gと比較的に軽量なので、着けていて重たいということはな無さそうです。
今回の次世代Spectaclesは、まだ一般販売せずクリエイターに提供している段階なので、将来的に一般販売される製品では、改良されサイズも今よりはスリム化することが期待できます。
基本スペック
現時点では、上記以外の詳細なスペック(ディスプレイやカメラの解像度、ワイヤレス通信の規格、ストレージ容量など)は公開されていないようです。
AR/XRクリエイターのDon Allen Stevenson IIIさんのレビュー動画にて、Spectaclesの初回起動時のペアリングや、基本的な操作方法などを確認ことができます。この方は新Spectaclesのテストユーザーとして最初の7人に選ばれたメンバーの1人です。
基本的な操作方法
基本操作は、以下のように右側のパネル部分がタッチパッドになっていて、指でタップしたりスワイプしたりして操作します。基本的にはSnap Lens(ARのフィルター)をメニューから選択して、リアルに見えている世界に投影するのがメインの機能となるのようです。
その他、キャプチャーした画像やビデオへのアクセスや、システム情報(バッテリー残量やWi-Fi状況など)の確認ができるようになっています。
あくまでスマホのSnapchatアプリとワイヤレスで通信しつつの操作になるので、現状、Spectacles単体で出来ることは限られますが、今までスマホ越しに見ていたLensフィルターをハンズフリーで確認したり体験できることがSpectaclesの大きな価値といえます。
バッテリーの充電方法
Spectaclesの充電方法は2つあり、1つはUSBケーブルで本体に充電する方法です。メガネのテンプル(つる)の部分にあるUSB端子に接続して充電します。
もうひとつの方法は、専用ケースで充電する方法です。ケースでは3回分充電できるようです。現状は本体のバッテリーがそこまで長くもたない(30分程度)ようなので、製品化するにあたって技術的な課題となりそうです。
画像・ビデオのキャプチャー機能
搭載された2つのカメラによって、Lensフィルターが投影された画像やビデオを撮影することができます。それらの画像やビデオは、Snapchatアプリを通じて投稿・共有することができます。
1世代前のモデルでは4GBのフラッシュストレージに動画を100本、静止画を1200枚ほど収録できました。今回の次世代機の方は、詳細なスペックが公表されていませんが、同等かそれ以上の収録が可能ではないかと推測されます。
空間スキャン機能
カメラに映る空間をスキャンしてその場にある立体物の形状や奥行き、たとえば壁やテーブル、建物、人の顔などを認識することができます。そのスキャンデータに基づいて、デジタルで作成されたLensフィルターと呼ばれる3Dのオブジェクトを現実世界に投影します。
これまで、クリエイターはスマホを覗き込んで確認するしかなかった
音声スキャン機能
新型Spectaclesはマイクを4つ搭載していて、人の音声を認識させて動作させることができるようです。
前述のDon Allenさんのレビュー動画では「Hey Snapchat, show me some dance moves」と発声すると、音声が認識されてダンスに関連したLensが表示されました。
現状、英語以外の言語に対応しているかは不明ですが、多言語に対応させるのは技術的にそれほど難しくはないでしょう。
Snap社とSpectaclesが目指す世界
AppleやGoogleが開発するARグラスは、おそらくスマホをいちいち見なくてもメガネデバイスから情報を確認できたり、iOS、Android、アプリ等を操作できるようになる、という部分にフォーカスした製品になると思います。
いっぽう、Snap社のSpectaclesに関しては「クリエイティビティの体験」や「コミュニケーションの拡張」を重視する方向で他社との差別化をはかっていくのかなと思います。
世界中のクリエイターが日々新しいLensフィルターやSnapゲームを作成しており、Snapchatユーザーは誰でもそれらのコンテンツを使用してオリジナリティ溢れるスナップやビデオを共有できます。
Snapchatと Spectaclesの組み合わせでしか成立しない特殊な体験やコミュニケーション、このあたりをSnap社の目指す方向性の軸としつつ、他のアプリやサービスと機能連携(SnapchatやBitmojiなどの機能を他社も使えるようにする)を強化することでスケールの拡大を狙っていくことが予想されます。
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